- 桜花 - 待ち合わせは 桜舞う頃 木洩れ日の下 思い出持ち寄って 言葉にするならば絆 素振りにするならば応援 何かしてあげたくて  学も金も名誉もない 俺には歌う事しか出来そうもなくて  虚仮なりにマイクと向き合った けれど 恐ろしく音楽が絵空事に思えた  こんなにも歌が鴻毛だなんて 声に精気がないなんて 愕然とした 屏息した 気概が闇の前で 膝を付いてた  自分が一体なんなのか模糊としていた 家族 友達 知り合い  どの顔にも会いたくなって 胸が潰れそうだった  顔をつねってもらっていいっすか? この悪い夢が本当に夢で覚めたらいいのに 恵まれたインフラ 恵まれた海山 恵まれた文明 見遣れば  世界から妬まれる程 あれ以来さ「なんて恵まれていないんだ俺は」と  口の端に掛けていた以前の態度が横暴として横たわって写るのは  傷つけられないと痛みに気付けない俺だから 尚更 焼きつけときたかった 「何の為に向かうの」と俺に疑問を投げ掛ける皆  その質問の意図は判ってるよ 迷ってるんだろ 自分も行きべきなのかと  行って無駄な場所なんてのは 此の世にはないと俺は考える 確かにあるのは場面だけだよ 確かに残るのは思い出だけだよ  それを形にするも終生 それをほっとくも終生 ただ 俺は場面も思い出も表しておきたい 黙ってるよりも 実在したと言いたい 俺なりの高さのマイライフ 俺なりの低さのライフスタイル  予約した切符に後悔も誘うようなら それはきっと  乗らない事がその時のベストさ 東へ行くにせよ 北へ曲がるにせよ  あなたの人生は あなたの人生でなきゃ駄目だと思う  その日 俺が乗った列車に善と悪は共存しない  ガタンゴトン ガタンゴトン 事実に揺られながら  車窓から見る実写がスライドされ 刻々と酷な姿が顕わになってく  列車を降り 歩いて行けるほど海岸は全然 近くなかった 信じらんねぇ  こんな場所まで こんなとこまでTsunamiが 人類の英知をせせら笑う  計りしれぬ自然様のエネルギーに立ち竦む  生い茂る雑草の強かさに 涙あふれる 涙あふれる 数字の振られたへし折れた柱の家屋 泥まみれの茶碗  片方しかない小さな小さな靴 ひび割れたコンクリ 割れたガラス  剥き出しにされたリビング 仮設での耐寒 絶望を数えだしたら  とても生きていけそうもない 無心で登るトヤケ  風の音以外聞こえないパノラマ マンガッタン島 捨て身の女神  空港に漂う潮の匂い 復興は戦と知りました  そこで懸命に戦う人達に出会いました  打ちひしがれ もう戦えない人達に出会いました  守りたいもの 伝えたいもの 大切にしたいもの  絆と呼ぶ以前から あったんすね あったんすね絆は  ある人からすれば俺は奇人 ある人からすれば俺も凶人 ある人からすれば俺が客人 どう呼ばれても厭人だけにはなるまいと  不得手ながらも歩いてきたつもりです 再会の約束は何も握手だけじゃない  手を合わす事も再会の約束 それを教えてくれたのは沢山の人達でした  そう紛れもなく人でした 祈り 祈り 祈り 人々の祈り 言葉にするならば絆 素振りにするならば応援 何かしなくてはと 今以って学も金も名誉もない 俺には歌う事しか出来そうもなくて  虚仮なりに懲りずにマイクと向き合う  時として 恐ろしく歌は絵空事かもしれないけれど  あの瞬間を あの未曾有を 今は歌っといてよかったと思えるんだ  ここまで来るのに3年……3年